NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q009最近、純チタンの溶接が話題になっておりますが溶接上の留意点は何ですか。また、純チタン金属板を鋼材の表面に被覆した構造物ができましたが、どの様に溶接するのか教えて下さい。

純チタン同士の接合方法は図1にしめすように各種ありますが、通常はTIG溶接が主流です。TIG溶接では厚物はフィラーワイヤを使用し、薄物はノンフィラーで、フラックスは使いません。チタンは酸素、窒素、水素、炭素などと脆い「軽比重介在物」を生成するので溶接時には「大気のシールド」「油、ゴミなどのクリーニング」に注意が必要なことは一般的に知られている通りです。複雑な形状の場合は、シールド治具を自分で工夫することが必要です。

図1
 
フィラーワイヤーは表1に示します。「共がね」を切断して使用する場合もありますが「汚れ、水分、疵」や「表面に酸素富加層」があるとブローホールや割れの原因になります。

表1

なお、チタンと鉄系を始め他の金属との溶接では、硬くて脆い「金層間化合物」が生成されるので、基本的には鋼材との直接溶接は不可能です。(図2)

図2

この度、東京湾横断道路の橋脚をチタンで被覆し飛沫干満帯の防食を百年間メンテナンスフリーとする工法が採用され、据え付けが完了しました。当社が工事施工を担当しました。この工法は新日鐵㈱が開発したチタンクラッド鋼板とそれを使用した被覆工法が採用されたもので、特許構造となっています。

従来日本では、チタンは化学装置、復水器、海水淡水化装置などに使用されてきました。近年は、一部屋根村に使われ始めていますが、鉄鋼構造物の腐食対策としての金属被覆方式は新しい考え方です。

海洋構造物を中心とする鋼構造物では、表面の防食の定期的なメンテナンスが必要なため、初期投資の際に充分な、防食を施しておかないと将来の投資額はメンテナンスにほとんど消費され、新規設備投資に回す比率が非常に小さくなる、との試算(図3)もあります。

図3

今後、公共投資を中心に増加する鋼構造物の被覆防食は非常に重要な役割を担っておりますので、各種の工法での開発が進んでおります。当社チタン室でも新日鐵㈱との共同開発を中心に溶接加工の見地から商品化の努力をしております。