NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q010SESNET溶接は母材希釈の大きい溶接法ですが、鋼材成分が溶接金属の性能にどのくらい影響しますか。

(ニッテツびいど No.111 1995 Winter)
現在、SESNET溶接は、主として建築鉄骨ボックス柱ダイヤフラムの溶接に適用されています。ダイヤフラム端面とスキンプレートおよび鋼製当て金により4面を鋼材で包囲された部分を大入熱溶接するため、母材希釈率は大きく(約50%)、溶接金属の化学成分(機械的性質)は鋼材成分の影響を受けます。特に、最近では4面鋼材包囲溶接部の溶込みを確保するために高電圧条件で施工する場合があり、母材希釈率はより大きくなる傾向にあります。

SESNET溶接の溶接金属は、母材希釈率が大きくなるに従い、じん性が低下する傾向にあります。この理由として、
①入熱量の増加による結晶粒の粗大化
②ワイヤに含まれている焼き入れ性元素であるMo量の減少
③母村の溶込みによる溶接金属中C量の増加
等の影響があります。

ご質問の鋼材成分としては、一般にエレクトロスラグ溶接ではC、N、Oの増加が容接金属のじん性を低下させると言われています。ここでは、最近SESNET溶接により確認したC量の影響について述ペます。

図1は、YM-55Aを用いた場合の溶接金属のC董と引張特性およびじん性との関係を整理したものです。溶接金属のC量が増加するに従い、引張強さは若干向上し、じん性は低下する傾向が見られます。ワイヤ中のC量は約0.05%、鋼材のC量は0.13~0.18%であり、溶接金属のC量増加は鋼材のCをピックアップするためです。

図

そのため、SESNET溶接金属のじん性を向上するためには、C量の低い鋼材を使用した方が良いと言えます。また、C量が同じ鋼材の場合はできるだけ母村希釈率を下げる方向(溶け込みを少なくする方向)がじん性を確保できることになります。

以上、鋼材成分(特にC量)の影響について述ペましたが、現在では溶接電圧を高めて溶接しても、溶接金属のじん性がvEo≧27Jを満足するようにワイヤ成分を改良したYM-55Sがあります。表1にYM-55Sの性能例を示します。電圧の増加(母材希釈率の増加、入熱量の増加)によりじん性が低下する傾向はありますが、vEo≧27Jを十分満足するレベルにあります。ボックス柱タイヤフラムの溶接にはYM-55Sのご使用をお1薦め致します。

表1
 
写真1
SESNET溶接機