NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q016メタル系ワイヤとは何ですか。

1.メタル系ワイヤとは?

メタル系ワイヤ(JlS Z3313-1993ではメタル系フラックス入リワイヤ)は、一言でいうと、「スラグの少ないフラックス入りワイヤ」です。
当社はSM(シームレスメタルコアードワイヤ)シリーズとして、各種メタル系ワイヤを服売しています。

SMシリーズは図1に示すように、SF-1のようなルチール系フラックス入りワイヤとソリッドワイヤの良さを兼ねた高能率ワイヤで、溶接の時に出るスラグの量が、
①ソリッドワイヤ並みに少ない、低スラグタイプ(SM-1など)
②①よりやや多い中スラグタイプ(SM-1S、SM-1Fなど)の2種類に大別されます。

図1
 

2.SMシリーズ共通の特長

①高能率
下向または水平すみ肉継手で、高溶着溶接や高速溶接ができます。

②低スパッタ
SF-1同様、スパッタが小粒で少なく、スパッタ付着防止剤がなくても、除去作業がほとんどいりません(図2)。

図2
 
次に代表的なSMワイヤの特長を説明します。

3.高溶着用SM-1

①溶着速度が速い
図3はボックス柱かど下盛溶接での、SM-1とソリッドワイヤの溶接時間を比較した実例です。

図3

SM-1は同じ電流で、ソリッドワイヤより溶着速度が速い上、より高電流で溶接できる(例:2mmΦで600A)ため、約25%溶接時間が短縮でき、大きなコストダウンが可能です(詳細は本誌No.103 P.15参照)。

②低スラグで連続多層溶接ができる
スラグが少ないため、多層溶接でスラグを1パス毎に取る必要がなく、5~6パス連続溶接ができます。
また、スラグを嫌う2電極溶接に多く適用されています(当社ハンドブック、P.458・459参照)。

③UT性能が良好
アークがシャープで広がりがあるため、欠陥が生じにくく、UT性能が良好です。

4.下向、すみ肉兼用SM-1S

①水平すみ肉のビ-ド形状が良好
SM-1よりスラグをやや多くして、水平すみ肉のビード形状を良くしています(写真1)。

写真1

②低スラグで連続多層溶接ができる
SM-1Sはスラグの量が従来フラックス入リワイヤの約半分で、3~4パスなら連続溶接できます。

③大入熱溶接でも、溶接金属の機械的性質が良好

5.高速すみ肉用◎SM-1F

①水平すみ肉で耐プライマ性が良好
②水平すみ肉でビ-ド形状が良好

全姿勢用のSF-1では、プライマ塗装鋼板の特に高速溶接で、ピットやガス溝が発生することがあります。
すみ肉溶接では、スラグは非常に重要で、多いほどビ-ド形状が良くなり、少ないほどピットやガス溝が出にくくなります(写真2、図4)。

写真2. 図4
 
SM-1Fはビ-ド形状を損なわない範囲でスラグを少なくし、耐プライマ性を向上きせたワイヤです。
無機ジンクプライマ鋼板の場合、50~90cm/minの高速溶接が可能です。さらに、HS-MAG法(2電極1プール法)に用いれば、150cm/minの高速溶接ができます。

以上のようにメタル系ワイヤは、SF-1に代表されるルチール系フラックス入りワイヤとソリッドワイヤの特長を併せもった高能率ワイヤで、今後さらに適用分野の拡大が期待されています。