NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q019プラズマ切断とガス切断について教えて下さい。

Q.酸素・プロパン(アセチレン)「以下ガス切断という」で軟鋼が切断できて、なぜ、ステンレス鋼が切断出来ないのだろうか?

A.現在、産業界で広く使用されているガス切断は、最も優れた切断法といえます。ではなぜ、あの硬い鉄がいともたやすく切断出来るのでしょうか。

唐突ですが、雨風に長い間、さらされた鉄を思い浮かべて下さい。真っ赤に錆びた鉄の状況が頭に浮かぶことと思います。この現象は、もうお分かりのように、鉄が大気中の酸素と反応して酸化したためです。
この酸化反応を激しくすると、鉄は酸化して燃え始めます。この現象を利用する方法がガス切断です。

一方プラズマ切断では、プラズマアークが持っている熱エネルギーを利用します。その熱エネルギーは摂氏約2万度と言われており、あらゆる金属を一瞬で溶解させる事が出来ます。
以上のようにガス切断は酸素ガスによる酸化反応切断法、プラズマ切断は高エネルギーを利用した溶断法なのです。したがって、錆びにくい(酸化しにくい)ステンレス鋼はガス切断では切断することが出来ないのです。(図1)

図1
図1

Q.プラズマ切断機の種類と適用範囲はどのようになっていますか?

A.
●酸素プラズマ切断機
酸素ガスをプラズマガスとして使用する切断法です。プラズマアークエネルギーと酸化反応による燃焼エネルギーが複合されるため、炭素鋼の高速自動切断に使用されています。NC制御による自動切断は、日本各地の造船所や鉄骨橋梁メーカー等で使用されています。

●アルゴン、水素プラズマ切断機
プラズマガスにアルゴンガスと水素ガスを必要に応じて窒素ガスを混合し非鉄金属を切断するのに最も優れているプラズマ切断機です。特にステンレス鋼の切断には優れた性能を示します。プラズマガスとして使用される水素ガスは、還元ガスとして知られており、この還元効果により、切面は金属光沢のある美しい面が得られます。

●窒素プラズマ切断機
窒素ガスをプラズマガスとして使用し、プラズマ切断機としては最も古い。酸素プラズマ切断機が登場するまでは造船所で幅広く使用されていた切断機です。しかしプラズマガスとして使用する窒素ガスはNOxの発生源であり、近年作業環境が厳しく制限される中でこの切断機は姿を消しつつあります。
切断適用鋼種は幅広くおよんでおり、鉄、非鉄を問いません。しかし切断面の窒化は溶接工程において欠陥が発生しやすい。この点においても同様に、使用されなくなっています。

●エアープラズマ切断機
無尽蔵にある大気をプラズマガスに使用するプラズマ切断機です。最も新しい技術ですが、プラズマ切断機の代名詞的な存在になりつつあります。電流150A以下の小型機が主流で、手動切断がほとんどです。(図2)

図2

Q.プラズマ切断機の切断可能板厚は?

A.現在、プラズマ切断最高の技術を用いても150mmtの板厚を切断するのが限界です。アルゴン・水素プラズマ切断機NW-300ACGを並列にし、600Aにすることで、可能になります。