NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q021マグ溶接のシールドガスについて教えてください。

●ガスシールドアーク溶接に用いるCO₂ガスは、JIS K1106に規定された「液化炭酸」3種の規格品か、または溶接用として下さい。CO₂ガスに水分が多いと、高温で解離し、溶接金属中に水素の形で含有され、気孔や遅れ割れなどの原因となります。
また、アルゴンガスは、JISK1105「溶接用のアルゴンガス」に適合するものを使用して下さい。

●ソリッドワイヤCO₂溶接の低電流域では、短絡移行し安定した溶接ができますが、大電流では粒状移行となり、大粒のスパッタが多発します。混合ガスではアルゴンが多くなるほど、溶滴は細かな粒となって移行し、スパッタも減少します。(図1)
また、アーク特性も異なり、溶接作業性、ビード外観・形状、溶接金属性能、溶け込み形状などにも影響を与え、アルゴン主体のガスでは、底部が狭い深溶込みになり、CO₂では底部の広い、鍋底形の溶込みとなって融合不良などの欠陥が減少します。(図2)

図1  図2

●CO₂溶接と区別して、アルゴンガスに10%程度以上のCO₂を混合したガスを使用する溶接をマグ溶接と呼ぶことがあります。軟鋼、高張力鋼などの溶接に広く使用されており、アークの指向性、溶接移行の円滑さ、ビード表面形状の美麗さなどの観点から20%前後のCO₂を混合したガスが多く使われます。
また、アルゴンガスに若干のCO₂ガスやO2ガスを混合した場合をミグ溶接と呼び、ステンレス鋼などの溶接に使用されています。

●シールドガス組成と溶接金属特性
シールドガス中のCO₂ガスはアーク熟で解離してCO₂⇔CO+Oや2CO₂⇔2CO₂+O2となり、活性な酸素によってワイヤ中の主要脱酸性元素であるSiやMnなどは酸化され、スラグとなり、溶接金属中の合金元素として歩留まるSi、Mn量も低下します。(図3)

図3
 
したがって、その分、機械的性質が変わるので、酸化ロス分を予め考慮した成分設計が必要です。当社の代表的な銘柄であるCO₂用ワイヤYM-26、YM-28やAr-CO₂用ワイヤYM-28Sは、これらシールドガスの影響を考慮し、良好な溶接作業性およぴ溶接金属の機槻的性質が得られるように成分設計されたものです。