NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q026パルス溶接で、スパッタが減少できるのはなぜですか?

Ar-CO₂混合ガスを使用して溶接するマグ溶接では、混合ガスの種類およびワイヤの径によってスパッタが多発する溶接電流域があります。この電流域は図1で示すように、溶滴のスプレー移行領域とドロップ移行領域の中間域いわゆる遷移領域で、シールドガスの混合比率によって電流範囲が変化します。

図1
図1 Ar-CO₂混合ガス中の溶滴移行状態
(ワイヤ径:1.2mm、突出し長:1.5mm)

パルス溶接法は、図2に示すように、この遷移領域以下のベース電流(30~40A)と、遷移領域以上のピーク電流(350~550A)とを周期的に切換えて溶接する方法で、平均電流が遷移領域にあっても、溶滴の形成と移行とがタイミング良く行われることにより、スパッタの発生量を非常に少なくすることができます。

図2
図2 パルス溶接における溶滴移行

とくに1回のパルスで1個の溶滴が規則的に移行する1パルス-1溶滴移行が行われるようにすると、
1.溶滴は主に高電流となるピーク電流期間で形成されるため、過度に溶滴が成長することがなく短絡が起こりにくい。
2.ベース電流期間でアークカが低下するため、溶滴がスムーズに移行しやすい。
3.2の際に短絡が生じても、電流が低いため、アーク力による溶融金属の飛散が少ないことによって、スパッタの発生量を低減することができます。

図3にパルス周波数とスパッタ発生量の関係を示します。スパッタの発生量はパルス周波数(1秒間のパルス回数)が変化すると、ある周波数で極小値となり、大幅に低減します。この周波数は、使用するワイヤや平均電流等によって異なるため、適切なパルス条件を選択することが必要となります。
 
図3
図3 パルス周波数とスパッタ発生量の関係