NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q029プラズマ溶接の板厚限界について教えて下さい

プラズマ溶接は、プラズマアークによる高温エネルギーで被溶接材料を溶解して再凝固させ、溶接を行う溶接法です。これをプラズマアークによるキーホール溶接と言い、このような溶接法は他には見られない独特の溶接法です。

ここでその溶接メカニズムについて説明いたします。

図1
図1

図2
図2
   
図1および図2はキーホール溶接の模式図です。斜線部分は高温エネルギーで溶解し、液体状になっている金属で、液体になると生じる表面張力で金属がブリッジし、Ⅰ開先の突き合わせ溶接が可能になります。基本的にはプラズマキーホール溶接は、溶接材料を全く使用しない母材共付け溶接ですが、余盛りや溶接強度を必要とするケースではフィラーワイヤを使用します。

次に現在のプラズマキーホール溶接の板厚限界について説明します。世界最大級のフラズマ溶接機NW-400AH-Ⅲ(当社製品出力電流:400A)の場合、SUS304の場合で板厚10mm/tが限界で、この壁を突き破ることが最大の技術的課題です。

ではなぜ限界があるのでしょうか。再び図1を参照して下さい。板厚が薄ければ図に示す表面張力が重力に逆らって溶融金属がブリッジし、突き合わせ溶接が可能になります。ところが板厚が増すにつれ、溶融金属の重量が増大し、それに比例して重力も大きく作用することになります。さらに、厚板になるほど、プラズマガスの流量(流速)を増やすため、ガス流のモーメントも増大し、この点も不利な方向に作用します。このように地球上では避けることが出来ない物理現象が大きな壁となりプラズマ溶接の板厚限界を決めていることになります。