NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q034ステンレス鋼と炭素鋼などの異材溶接について教えてください

ステンレス鋼と炭素鋼との異材溶接では、溶接材料の選定を誤ると、溶接により炭素鋼の希釈を受けるので、溶接金属中のNi、Cr含有量が減少し、脆く割れやすい組織になります。そこで、一般的にはNi、Cr含有量の多い309系溶材を使用します。

309系溶接材料を用いて炭素鋼による希釈(溶接条件)をコントロールすればステンレス鋼板とほぼ同等の成分となるため、高温割れの生じない安定した溶接金属を得ることが出来ます。

図1のようなステンレス鋼SUS304(18Cr-8Ni)と軟鋼(SS41)の異材溶接D309溶接棒を用いて継手溶接を行った場合、図2にあるシェフラーの状態図により、溶接金属の組成を推定することができます。

図1 異材継手
図1 異材継手

図2 シェフラーの状態図
図2 シェフラーの状態図
 
SUS304(18Cr-8Ni)と軟鋼(SS41)のNi当量(%Ni+30×%C+0.5×%Mn)とCr当量(%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nb)をそれぞれ算出し、図2にプロット(A,B)します。両点を直線で結んだ中央が溶接点(C)となります。

さらに、D309溶接棒のNi当量、Cr当量をそれぞれ算出し、図2にプロット(D)します。ここでD点とC点の直線上が溶接金属組成の存在するラインとなります。母材への希釈が少ない段階では、溶接金属はD309の組成に近いオーステナイト+フェライトの混合領域にありますが、希釈の増加に伴ってその組成はオーステナイト単層の預域を経て、オーステナイト+マルテンサイトの混合領域へと変化していきます。

ここで、溶接時の割れを防止するには、溶接金属の組成をオーステナイト+フェライト混合領域にすることが有効であるので、この観点から溶接時の希釈をE点より右側(希釈率約30%以下)になるようにする必要があります。

図3に希釈率の算出方法を示します。

図3 希釈率算出法
図3 希釈率算出法
 
実際の施工においては、磁気吹きの影響で軟鋼側の方がステンレス鋼側よりも希釈を受け、図2中のC点は軟鋼(B点)側に移動するので、希釈をさらに低めに抑える必要があります。

一般的には、高温割れ防止の観点から溶接金属中のフェライト量を最低でも約3%以上確保することが必要とされています。

軟鋼の板厚が厚い場合には、軟鋼の開先面に309系溶材にてバタリングを行い、溶接を行った方が耐割れ性の点から有効です。図4に厚板の異材継手施工例を示します。
 
図4 厚板の異材継手施工例
図4 厚板の異材継手施工例

一般的にステンレス鋼と炭素鋼の異材溶接に限らず、異種材料金属の溶接では希釈率を抑えて溶接を行うことが、健全な溶接金属を得るのに必要であります。
 
表1 各鋼種組み合わせに対する適用溶接棒選定例
表1 各鋼種組み合わせに対する適用溶接棒選定例