NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q035耐火鋼の溶接に際して、溶接法、溶接材料の選択、使用上の注意点について教えてください。

耐火鋼は、Mo、Nbなどの合金元素を添加して、図1に示すように600℃における高温耐力を向上させた鋼材で、常湿時の性能は溶接構造用圧延鋼材JlSG3106-1988に合致します。

現在ではHT400、HT490およびHT520鋼(新日鐵繊規格記号としてはSM400-NFR~SM520-NFR)およびHT590鋼が実用化されています。
 
図1 耐火鋼(NSFR)と一般鋼の高温耐力比較
図1 耐火鋼(NSFR)と一般鋼の高温耐力比較

表1に耐火鋼の成分例を一般鋼との比較で示しますが、耐火鋼にはMo、Nbが添加され、一般鋼に比べてCeqは高いのですがC、Si、Mnの含有量が低くPcmは低くなっています。このため、図2に示すように斜めY形溶接割れ試験では、耐火網は一般鋼より低い予熱温度で溶接割れを防止できます。
 
表1 耐火鋼と一般鋼の化学成分例
表1 耐火鋼と一般鋼の化学成分例
 
図2 耐火鋼と一般鋼の斜めY型割れ試験による割れ停止予熱温度比較
図2 耐火鋼と一般鋼の斜めY型割れ試験による割れ停止予熱温度比較

溶接材料には、被覆アーク溶接棒、ガスシールドアークソリッドワイヤ、ガスシールドフラックス入りワイヤ、サブマージアーク溶接材料およびエレクトロスラグ溶接材料があり、一例を図3に示すように、高温耐力確保のためMoを適正量添加しています。

図3 SMAW溶接金属中のMo量と常温強度および600℃耐力の関係
図3 SMAW溶接金属中のMo量と常温強度および600℃耐力の関係

特に、サブマージアーク溶接やエレクトロスラグ溶接のような母材希釈率の高い溶接法では、母材からの耐火元素の移行も考慮して溶接材料を設計しています。さらにTi、B添加大入熱溶接用材料では高温伸びも考慮しています。

これらの溶接材料の使用上の留意点は、SM400~SM520鋼と同様です。例えば、割れやブローホール等の欠陥防止から、開先内のさびや油汚れ、プライマーなどは除去し、溶接棒およびサブマージアーク用フラックスは使用前に乾燥してください。一例を表2に示します。また、予熱は表3に一例を示すように、鉄骨工事技術指針を参考に実施してください。
 
表2 溶接材料の乾燥条件
表2 溶接材料の乾燥条件

表3 鉄骨工事指針による標準予熱温度
表3 鉄骨工事指針による標準予熱温度
(低水素系被膜アーク溶接、炭酸ガスガスアーク溶接)