NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q036建築・鉄骨分野におけるボックス柱のダイアフラムの溶接に多く使われているSESNETET(セスネット)法の原理、エレクトロスラグ溶接材料のJIS規格、施工における起動用フラックスの添加量の決め方、スキンプレートが薄い場合の施工方法などについて教えてください。

1. SESNET法の原理

SESNET法の原理エレクトロスラグ溶接法とアーク溶接法との大きな相違点は、前者は溶融スラグの抵抗発熱を利用、後者はアーク熱を利用してワイヤおよび母材を溶融して溶接することにあります。

SESNET法の原理を図1に示しますが、溶接は立向狭開先(一般的にⅠ開先使用)内の母材端面と当金とで囲まれた部分に非消耗ノズルを設置し、このノズル中空部をガイドとしてソリッドワイヤ(1.6mmΦ)を供給し起動フラックスを添加しながら、直流定電圧特性の溶接電源を用いて、エレクトロスラグ溶接を行うものです。

溶接開始直後はワイヤと母材(実際には鋼粒を散布したスタート用鋼タブ)との間でアークが発生しますが、周囲のフラックスがそのアーク熱により加熱溶融され、スラグ浴が形成されます。この溶融スラグは通電電流により高温となり、これによって連続供給されるワイヤおよび母材が溶融され、スラグ浴の底部で溶融金属が形成されます。

そして、溶融金属の上昇にともなってワイヤの突出し長さを一定に保持するように溶接電流の変化を検和し、非消耗水冷ノズルを自動的に上昇させ、ワイヤのみが高電流密度で溶融し、高能率な溶接が自動的に行われます。ダイアフラムの板厚19~65mmまでは1電極、60以上~100mmまでは2電極で溶接が可能です。1電極ではノズルを開先内で固定あるいは水平方向に揺動させ、2電極ではダイアフラム板厚に応じた極間でノズルを固定させて溶接を行います。

2. SESNET法に使用する溶接材料のJIS規格

エレクトロスラグ溶接の溶接材料規格はJIS Z 3353-1999に示されています。抜粋としてワイヤの化学成分、フラックスの化学成分、溶接金属の機械的性質をそれぞれ表1、表2、表3に示します。SESNET法に使用される当社溶接材料の該当規格を表4に示します。

表1 エレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分(JIS Z 3353 抜粋)
表1 エレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分(JIS Z 3353 抜粋)

表2 エレクトロスラグ溶接用フラックスの化学成分(JIS Z 3353 抜粋)
表2 エレクトロスラグ溶接用フラックスの化学成分(JIS Z 3353 抜粋)

表3 エレクトロスラグ溶接金属の機械的性質(JIS Z 3353 抜粋)
表3 エレクトロスラグ溶接金属の機械的性質(JIS Z 3353 抜粋)

表4 SESNET法用溶接材料JIS該当規格
表4 SESNET法用溶接材料JIS該当規格
 

3. エレクトロスラグ溶接における起動用フラックスの添加量の決め方

SESNET法によるボックス柱ダイアフラムの溶接例で説明いたします。
  
  フラックス添加量=開先断面積×スラグ浴深さ×フラックス嵩密度

ダイアフラム板厚:30mm、開先間隙:25mm、スラグ浴深さ:35mm、フラックス嵩密度:2.4の場合のフラックス添加量を計算してみます。
  
30(mm)×25(mm)×35(mm)×0.0024=63(gr)

となります。

スラグ浴深さは実際には、スラグ浴の底部は溶け込みにより初期の開先幅より広がるため、約5mm程度浅くなることを見込んでおります。この溶け込み幅は使用する溶接電圧によって変化します。計算は35mmに設定しておりますが、溶接時のスラグ浴深さは30mm程度になると思われます。

4. スキンプレートが薄板(20mmt程度)の場合の有効な溶接施工方法

スキンプレー卜が薄い場合、開先間隙の中央に非消耗ノズルをセットして溶接すると溶け込みが大きくなり、スキンプレートから溶融金属が溶け落ちることがあります。

溶け落ち防止の有効な仕方としては、非消耗ノズルのセット位置を開先間隙の中央よりダイアフラム側に2mm程度ずらして溶接することです。あとはスキンプレートの溶け方(焼け具合)を見ながら、溶接電圧を若干調整することが必要です