NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q053開先無しT型すみ肉サブマージアーク溶接のような大入熱溶接に、なぜボンドフラックスではなく「メルトフラックス」が推奨されているのですか?

羽田空港拡張プロジェクトなどでも検討されているように、ビルドH鋼は厚肉化の傾向にあり、能率よく溶接するため大入熱サブマージアーク溶接が用いられています。

この場合、ウェブ板厚が25mm程度以下では開先加工なし深溶込み施工が採用される傾向にあります。大入熱サブマージアーク溶接法としては、一般的にボンドフラックスが普及しています。しかし、ボンドフラックスによる開先加工なし深溶込み溶接では、
1.所定の溶込みを得るために、高電流、低速度溶接となるため、必要以上の溶着量となり、脚長が過大傾向となる。
2.従来のメルトフラックスによるすみ肉ビード形状に比べ、止端部のなじみ等において必ずしも満足できない。
3.設備的に大容量の電源が必要である。
などの問題があります。

そこで、当社では上記問題を一挙に解決する溶接材料として、NF-900S×Y-DL(Y-D)を提供しております。この材料はフラックス、ワイヤの消費量が少なく、経済的にも極めて有利な溶接材料です。本溶接材料の特性は以下の通りです。

●NF-900S×Y-DLの特性
1.開先加工なしで、ウェブ板厚25mm程度までの完全溶込み溶接が可能です。
2.開先加工なしで、ウェブ板厚19~40mmまでの所要のど厚を確保した1パス溶接が可能です。
3.フラックスの溶込みが深く低電流で溶接でき、しかも高速溶接が可能なので、その結果、過大脚長を防止できます。
4.溶材消費量が少なく、経済的です(図1)。

図1 従来品と新製品の溶材消費量の比較
図1 従来品と新製品の溶材消費量の比較
 
なお、ワイヤは鋼板の炭素量により、第1電極Y-DL、第2電極Y-Dに組み合わせる場合があります。実際の施工に当たっては溶接設備(電源容量・キャプタイヤケーブルの太さ)などによって適用板厚範囲が変わります。ご質問などがおありでしたら、ご遠慮なく、当社・技術サービスグループにお問い合わせ下さい。