技術情報溶接Q&A
Q054溶接をする前になぜ予熱をする必要があるのですか?また何度くらいの予熱をすればよいのか、教えて下さい。
標準的な実施工での予熱温度を表1に示します。しかし、鋼材の材質、板厚、継手形状、構造物部材寸法、拘束度合い、溶接方法、使用する溶接材料や作業環境条件(気温、天候など)等によっては、表中の値を参考に、予熱温度範囲の選定に留意する必要があります。
予熱方法としては、ガスバーナー、電気抵抗加熱器、赤外線電気ヒーター、炉中などの方法があります。ガスバーナーでの加熱は簡便性に富んでいますが、長時間一定温度に均一に加熱を行う場合には、サーモスタット付の電気抵抗加熱器などを用途に応じて使用することをお奨めします。また、予熱作業は、予熱温度と共に加熱速度や予熱範囲も重要です。例えば、開先部のみを加熱するのではなく、溶接線の全周の約100mm離れた範囲が所定の温度になるように幅広く加熱することが大事で、温度測定には表面温度計または温度チョークなどを用いて溶接線の両側約50mmの位置で測定して下さい。
また、予熱とは区別されますが、外気温度が低く、鋼材表面温度も低い場合や開先面に結露の恐れがある場合には、溶接を行う前に溶接線の付近を約50℃程度にいったん加熱する必要があります。
なお、使用する溶接材料についても、溶接メーカー推奨の乾燥条件や保管管理を行って取り扱って下さい。
表1 予熱温度(℃)の標準
鋼 種 | 溶接方法 | 板厚区分(mm) | |||
t≦25 | 25<t≦40 | 40<t≦50 | 50<t≦100 | ||
SM400 | 低水素系以外の被覆アーク溶接 | 予熱なし | 50 | - | - |
低水素系被覆アーク溶接 | 予熱なし | 予熱なし | 50 | 50 | |
サブマージアーク溶接 ガスシールドアーク溶接 |
予熱なし | 予熱なし | 予熱なし | 予熱なし | |
SMA400W | 低水素系被覆アーク溶接 | 予熱なし | 予熱なし | 50 | 50 |
サブマージアーク溶接 | 予熱なし | 予熱なし | 予熱なし | 予熱なし | |
ガスシールドアーク溶接 | |||||
SM490 SM490Y |
低水素系被覆アーク溶接 | 予熱なし | 50 | 80 | 80 |
サブマージアーク溶接 | 予熱なし | 予熱なし | 50 | 50 | |
ガスシールドアーク溶接 | |||||
SM520 SM570 |
低水素系被覆アーク溶接 | 予熱なし | 80 | 80 | 100 |
サブマージアーク溶接 | 予熱なし | 50 | 50 | 80 | |
ガスシールドアーク溶接 | |||||
SMA490W SMA570W |
低水素系被覆アーク溶接 | 予熱なし | 80 | 80 | 100 |
サブマージアーク溶接 | 予熱なし | 50 | 50 | 80 | |
ガスシールドアーク溶接 |
1)“予熱なし”については、気温(室温の場合は室温)が5℃以下の場合は、20℃程度に加熱
2)予熱温度の標準を適用する場合の鋼材PCM(%)の条件は下記の通り
鋼材の板厚 (mm) |
鋼 種 | ||||
SM400 | SMA400W | SM490 SM490Y |
SM520 SM570 |
SMA490W SMA570W |
|
t≦25 | 0.24以下 | 0.24以下 | 0.26以下 | 0.26以下 | 0.26以下 |
25<t≦50 | 0.24以下 | 0.24以下 | 0.26以下 | 0.27以下 | 0.27以下 |
50<t≦100 | 0.24以下 | 0.24以下 | 0.27以下 | 0.29以下 | 0.29以下 |
PCM = C + Si / 30 + Mn / 20 + Cu / 20 + Ni / 60 + Cr / 20 + Mo / 15 + V / 10 + 5B (%)