技術情報溶接Q&A
Q055ガスシールドアーク溶接における気孔欠陥の発生原因と防止方法について教えて下さい

写真1 溶接ビード外観と気孔の一例(水平すみ肉、ワイヤ;JIS YFW-C50DM)
これらの気孔欠陥が発生する位置や形は、その発生原因によりさまざまです。気孔欠陥の発生原因は図1の要因図のように分類することができます。気孔欠陥が生じる原因は種々ありますが、欠陥を未然に防止することが重要であり、主な対策を下記に示します。

図1 気孔欠陥の要因図
(1)ガスシールド状態からの防止
シールドガスがアークや溶融池を十分に覆うことができない状態になると、空気中の窒素が溶融金属中に溶込みブローホールの原因となります。よって、シールド状態の良否は気孔欠陥の発生に大きく影響します。通常のマグ・ミグ溶接において、溶接部への影響が少なくなるのは一般的に風速2m/sec以下とされています。もちろんノズルの先端と母材との距離やノズルの形状、ガス流量にも影響を受けますが、十分なシールド状態を得るには、風速2m/secという「微風」以下で溶接しなければならないことに留意しなければなりません。
(2)溶接材料からの防止
プライマ塗装鋼板の溶接時に発生する気孔欠陥は、プライマがアーク熱で分解して発生するH₂やCO₂ガス等が原因で発生します。プライマの膜厚が厚くなると気孔欠陥が発生しやすくなるので、膜厚の管理は重要です。プライマ塗装鋼板の溶接時に発生する気孔欠陥に対しては、プライマの種類に応じた適切なフラックス入りワイヤを選択することによって大幅に改善することができます。弊社には無機ジンクプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接で耐ピット性の優れたフラックス入りワイヤとしてメタル系SM-1Fがあります。
亜鉛めっき鋼板の溶接ではソリッドワイヤによる気孔防止法があります。重ね溶接で母材の合せ面から発生した亜鉛蒸気が溶融池に侵入して気泡となるのを抑制する。あるいはその気泡が成長するのを抑制しようとするもので、ソリッドワイヤの成分を調整することによって溶融金属の粘度や表面張力を高めると優れた耐欠陥性(ピット発生量の減少)をもつようになります。弊社には亜鉛めっき鋼板用ソリッドワイヤとしてYM-22Z(Ar-CO₂用)、YM-28Z(CO₂用)があります。
亜鉛めっき鋼板の溶接ではソリッドワイヤによる気孔防止法があります。重ね溶接で母材の合せ面から発生した亜鉛蒸気が溶融池に侵入して気泡となるのを抑制する。あるいはその気泡が成長するのを抑制しようとするもので、ソリッドワイヤの成分を調整することによって溶融金属の粘度や表面張力を高めると優れた耐欠陥性(ピット発生量の減少)をもつようになります。弊社には亜鉛めっき鋼板用ソリッドワイヤとしてYM-22Z(Ar-CO₂用)、YM-28Z(CO₂用)があります。
(3)溶接電源からの防止
パルスなしのマグ・ミグ溶接においてアーク電圧をあまり低くすると、短絡解放時にアークや溶融池の不安定現象が生じて、その際にシールドガスを巻き込むためブローホールが発生しやすくなります。しかし、比較的低電圧域まで短絡が生じないパルスマグ・ミグ溶接では、かなりの低電圧域まで安定した溶滴移行が可能となり、アークも不安定とはならないため、低電圧域でのブローホールの発生が大幅に抑制されます。
(4)その他
溶接の熱でガス化する物質が母材表面にあると、気孔欠陥が生じやすくなります。その主なものは、水分、油、ラッカー、鋼板表面の錆などの汚れで、溶接前に除去してください。
以上のような気孔欠陥の発生防止方法を参考に、最適な溶接施工条件(溶接電流・アーク電圧・溶接速度・トーチ角度・突出し長さ等)を選定して欠陥のない良好な溶接を実施して下さい。
以上のような気孔欠陥の発生防止方法を参考に、最適な溶接施工条件(溶接電流・アーク電圧・溶接速度・トーチ角度・突出し長さ等)を選定して欠陥のない良好な溶接を実施して下さい。