NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

Q057日鉄溶接工業(株)の知的財産業務の概要および成果などについて教えてください

1.知的財産部門概要

当社で扱っております溶接機器については、造船所向けの大型製造設備から簡易なすみ肉溶接台車まで、多岐にわたっております。それぞれの機器についても専用化されたものから汎用的なものまであります。今回は、それらの中から最近の改良例や適用例について紹介いたします。

2.知的財産業務の内容

当社は、溶接に関わる総合メーカーとして、溶接材料、機器および溶接施工法を需要家の皆様に提供することで、わが国の産業の一翼を担ってまいりました。

(1)特許管理
溶接技術は、高度な技術が集約されて成り立っており、当社では早くから特許出願およびその活用等知的財産活動に力を入れ、専従社員とともに全社員一丸となって活動しております。
その結果、(1)被覆アーク溶接棒、(2)ソリッドワイヤ、(3)フラックス入りワイヤ、(4)ペールパック、(5)裏当材、(6)溶接方法、(7)溶接機器、(8)溶接材料の製造、他について200件余の特許権を保有しています。

(2)商標管理
お客様にご使用いただいている商品が当社製品であることをご理解いただけるように、当社製品の銘柄には多くの商標権を得ており、現時点で60件余の登録商標を保有しております。

(3)技術契約
技術契約の管理は、お客様が保有されている溶接にかかわる最新の優れた多くの技術について、お客様と共同で、さらに技術開発、活用のために種々な形での技術契約を締結させていただく業務を行っております。

3.知的財産業務の進め方

現在、さらなる活性化を目指して社内の議論を深めておりますが、特に力を入れております具体的活動は以下のとおりです。知的財産業務の内容は、基本的な方針を決める「特許会議」および実務的な内容を決める「特許責任者会議」において決定します。

特許会議は、毎年度の初頭に各部門の特許総括責任者と知財部門が一同に会し、年間の活動方針、特許戦略を議論し、決定します。特許責任者会議は、年度の中間期と年度末に、各部門の特許責任者および実務担当者が、年度計画に照らした出願状況の評価、今後の活動方針、特許の活用および対外的な防衛対策等を検討します。ここで決められた計画が実現するように、知的財産業務担当の社員は、日頃関係部門を訪問し、特許明細書作成に協力するなど、具体的な考案の特許出願を推進しております。

また、社員の特許意識の向上、および出願促進の施策として特許研修会および社外研修会の活用を行っています。毎年1回、若手、中堅技術者を中心に、特許に関する知識や意識の向上のための勉強会と、具体的な案件の特許明細書作成のための集合研修会を実施し、特許出願をしつつ、明細書作成の実力養成に努め、他には知的財産に関する新人研修、一般研修、外部団体による研修受講等を随時実施しております。

4.当社の注目特許の例

当社の溶接に関わる総合メーカーとしての技術を結集して創意工夫いたしました発明のうち、最近、高い評価を頂いているものの一つに『NS-ワンサイドマグ』(特許第3121597号「2電極片面ガスシールドアーク溶接装置」)があります。

この発明の溶接装置は図1に示すように、2電極片面ガスシールドアーク溶接装置であって、母材鋼板の開先角度30~55゜の開先の裏面に当てる裏当材、開先の内部に充填するカットワイヤ(鋼粒または鉄粉)、開先方向に走行する台車、開先方向に配列された台車に搭載された2台のガスシールドアーク溶接トーチ、その2台の溶接トーチの搖動機構、および2台の溶接トーチの傾斜を調整するためのトーチ角度調整機構を備え、台車の先行溶接トーチの溶接電極ワイヤはソリッドワイヤ、下流となる後行溶接トーチの溶接電極ワイヤはフラックス入りワイヤです。この装置による溶接はアークが安定し、耐割れ性および良好な表、裏ビードが得られ、高能率で実施することができます(「ワンサイドマグ」は当社の登録商標です)。この特許で保護された技術は,平成12年度の溶接協会・技術賞本賞を受賞し、お客様には、40台余をご使用いただいております。

今後とも、溶接技術の進歩を通じてわが国の産業の発展にお役に立てるよう、努めてまいりたいと思います。
 
図1 NS-ワンサイドマグ溶接の概要
図1 NS-ワンサイドマグ溶接の概要