技術情報溶接Q&A
Q059フラックス入りワイヤに、数種類のワイヤ径があるのはなぜですか?
ワイヤ径を選ぶ場合、能率面=溶着速度の絶対値で言えば、より高電流が使用できる太径ワイヤが有利となりますが、実際には溶接作業性面や溶接機器類も含めて総合的に判断する必要があります。

図1 溶接電流と溶着速度の関係の一例(近似値)
表1 SF-1の製造寸法および電流範囲の例
(単位:A)
ワイヤ径(mm) | 1.2 | 1.4 | 1.6 |
下向 | 180~320 | 200~410 | 220~450 |
上向 | 180~280 | 200~300 | ─ |
横向 | 180~300 | 200~350 | 220~400 |
水平すみ肉 | 180~320 | 200~410 | 220~450 |
立向下進すみ肉 | 200~280 | 220~300 | ─ |
立向上進すみ肉 | 180~260 | 200~280 | 200~280 |
図1に、フラックス入りワイヤの溶接電流と溶着速度の関係を調べた一例を示します。
図1および表1のように、溶接電流が高いほど溶着速度は大きく、1.2mmに比べ1.4mmの方が高い電流を使用できますが、同じ電流で比較すると1.2mmの方が溶着速度は大きくなります。
一方、溶接作業性については、例えば立向姿勢での高電流施工ではメタル垂れが発生しやすくなるなど、アークの安定性やビード形状、スパッタ発生量なども考慮し、健全な溶接継手が得られる範囲において最も高能率なワイヤ径を選択する必要があります。
これらを整理すると次のようになります。
・各姿勢溶接が混在するような場合、低電流でも溶接しやすい1.2mmが作業性面から有利です。
・専用の自動機を用いて高電流を常用できる場合は1.4mm、1.6mmが溶着量面から有利です。
・薄板、小脚長のすみ肉溶接、歪変形を少なくしたい場合は、より低電流で溶接しやすい1.0mmが有利です。
・脚長7mmを超えるような大脚長水平すみ肉溶接の場合では1.4mmが有利となります。
・靭性確保のため入熱制限がある場合、太径よりも1.2mmの方が良い結果を得やすくなります。