技術情報溶接Q&A
F024海浜耐候性鋼用溶接材料について
1. はじめに
本の主要地域のほとんどは海岸線に近いことから、従来の耐候性鋼では必ずしも期待通りの効果が得られない場合がありました。そこで、建設省土木研究所、鋼材倶楽部および日本橋梁建設協会の三者により調査研究が実施され、図1に示す無塗装耐候性鋼の適用指針(飛来塩分量が0.05mdd(mg/dm²/day)以下になるよう海岸からの距離を取る)が定められましたが、この制約条件を受けずに、より海岸線に近い地域でも適用可能な飛来塩分に強い耐候性鋼材が新日本製鐵(株)で開発されました。
図1
このような背景から、弊社においてもこの新開発鋼材用溶接材料の検討を開始し、各種溶接材料を開発いたしましたので、以下にその諸特性についてご紹介します。
2. 各種溶接材料銘柄一覧
今回開発した海浜耐候性鋼用各種溶接材料を表1に示しますが、適用する鋼材には490N/mm²級および570N/mm²級の2種類があり、被覆アーク溶接棒を除いて同一材料での施工ができます。表1
また、これらの溶接材料が保有すべき特性としては、溶接継手部が鋼材と同等の成分を有し耐候性能を確保する必要があります。その特長は、特に従来の0.3%程度のNiを約3%に増加させるとともに、海浜地区での耐食性に有害なCrを無添加にした成分系にあります。
各種溶接材料のJIS規格に準拠し溶着金属試験を実施した結果を表2に示します。この試験結果からは、各種溶接材料とも該当JIS規格を十分に満足していることが確認されました。

溶接方法 | 鋼材強度区分(JIS規格) | 備考 | |
490N/mm²級 | 570N/mm²級 | ||
被覆アーク | CT-50N [JIS Z 3212 D5016] |
CT-60N [JIS Z 3212 D5816] |
3.2~6.0Φ |
サブマージアーク | ワイヤ:Y-3NI [JIS Z 3351 YS-N2] フラックス:NB-55LM [JIS Z 3352 FS-BN1] [溶金:JIS Z 3183 S584-H] |
ワイヤ:Y-3NI [JIS Z 3351 YS-N2] フラックス:NB-55LM [JIS Z 3352 FS-BN1] [溶金:JIS Z 3183 S584-H] |
ワイヤ [4.0、4.8Φ] ボンドフラックス [12X100メッシュ] |
ガスシールドアーク (ソリッドワイヤ) |
YM-3N (Ar-CO₂シールド) [JIS Z 3325 YGL3-6G(AP)] |
YM-3N (Ar-CO₂シールド) [JIS Z 3325 YGL3-6G(AP)] |
1.2、1.6Φ (全姿勢溶接) |
ガスシールドアーク (フラックス入りワイヤ) |
SF-60WN (CO₂シールド) [JIS Z 3313 YFW-C60GR] |
SF-60WN (CO₂シールド) [JIS Z 3313 YFW-C60GR] |
1.2、1.4Φ (全姿勢溶接) |
また、これらの溶接材料が保有すべき特性としては、溶接継手部が鋼材と同等の成分を有し耐候性能を確保する必要があります。その特長は、特に従来の0.3%程度のNiを約3%に増加させるとともに、海浜地区での耐食性に有害なCrを無添加にした成分系にあります。
3. 溶着金属性能
各種溶接材料のJIS規格に準拠し溶着金属試験を実施した結果を表2に示します。この試験結果からは、各種溶接材料とも該当JIS規格を十分に満足していることが確認されました。




4. おわりに
高飛来海塩粒子環境でも安定錆が形成できる3%Ni系海浜耐候性鋼用の溶接材料についてご紹介致しましたが、この溶接材料はすでに北陸新幹線/北陸道架道橋等をはじめ、各地での実施工に適用されております。今後とも、市場ニーズにマッチしたより良い製品・高品質な溶接材料を開発し、皆様にご提供していきたいと考えております。