NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

F048溶接機器:最近の技術、適用例について

はじめに

当社で扱っております溶接機器については、造船所向けの大型製造設備から簡易なすみ肉溶接台車まで、多岐にわたっております。それぞれの機器についても専用化されたものから汎用的なものまであります。今回は、それらの中から最近の改良例や適用例について紹介いたします。
  

最近の改良例

1.溶接線のセンシング
溶接線を溶接中に正しく、リアルタイムにセンシングすることは溶接部の品質確保にとって重要な要素であります。そのため、接触式センサーなどによるセンシングを利用して各種機器の自動化を進めてきました。一方、非接触式のセンサーによる溶接線のセンシングとしましてはレーザーセンサーによるリアルタイム溶接線倣いがあり、これまでは小型アーク溶接ロボットと組み合わせて、薄板から厚板の多層盛溶接まで対応しています。写真-1にそれぞれのタイプの溶接ロボットを示します。レーザーセンサーを利用する利点としましてはリアルタイムに継ぎ手の情報が得られるため、その情報を基に施工条件の修正などに反映することができることです。例えばルートギャップの変動に対しては溶接速度とウィービング幅を修正することなどがあります。最近ではSAW片面板継ぎ溶接装置にレーザーセンサーを搭載し、溶接中の継ぎ手の情報から溶接速度や溶接条件などに反映し、溶接品質の向上を図っています。図-1にそのシステムの概要を示します。写真-2にレーザーセンサーによるモニタリングの1例を示します。

写真-1
写真-1

図-1 SAW 片面板継溶接システムの概要
図-1 SAW片面板継溶接システムの概要

写真-2 レーザーセンシングモニター例(V開先)
写真-2 レーザーセンシングモニター例(V開先)

2. 2トーチタイプの小型自動溶接機 SY-mini
標準タイプの自動溶接機SY-miniは立て向き、横向き、下向きなど各方面で使用されていますが、溶接作業能率向上の一環として2トーチタイプのSY-miniを開発しました。写真-3にその外観を示します。それぞれのトーチを個別にアークスタートすることが出来ます。また、それぞれにオシレーターを取り付けることが出来ますのでさらに能率向上に貢献できるものと考えています。 

2トーチタイプの小型自動溶接機 SY-mini
 

最近の当社機器の適用例

1.NS-ワンサイドマグ溶接機
大型のSAW溶接装置では施工することの出来ないような部材の板継ぎ溶接には、簡易の2電極片面CO₂溶接機(NS-ワンサイドマグ溶接機)が使用されています。ルートギャップを確保する必要も無く、しかも開先内仮付けにより母材を固定するので段取りが容易です。しかも、板厚22mmまで1パス溶接することが出来、SAWに比較して溶接後の角変形が少ないなどの利点から最近になって再び各方面から引き合いが増加しています。写真-4には造船所現場でのNS-ワンサイドマグ溶接機の実用例を示します。写真-5にはNS-ワンサイドマグ溶接機による溶接部の断面マクロを示します。
写真-4 NS-ワンサイドマグ溶接機実用例
写真-4 NS-ワンサイドマグ溶接機実用例

写真-5 NS-ワンサイドマグ溶接機による断面マクロ
写真-5 NS-ワンサイドマグ溶接機による断面マクロ
2.簡易溶接ロボットNAVI-21による立向、上向溶接適用
立向溶接は溶融金属の垂れ落ちや、ビード形状の点から、通常はフラックス入りワイヤが使用されることが多い傾向にありますが、鋼種によってはソリッドワイヤで施工しなければならないケースがあります。特にHT60、HT80などの高張力鋼の溶接では開先内ビードが凸型ビードになりやすく、次層での融合不良などの欠陥発生の原因になっていました。このような溶接に対しNAVI-21の持つV型ウィービング機能とパルス溶接機とを組み合わせることにより、開先内でもフラットなビード断面形状を得ることが出来、次層での欠陥防止に役立っています。写真-6にV型ウィービングによる立て向き溶接のビード断面マクロを示します。
2. 簡易溶接ロボットNAVI-21による立向、上向溶接適用

写真-6 V型ウィービングによる立向溶接例(HT80)
写真-6 V型ウィービングによる立向溶接例(HT80)
上向溶接においても溶融金属が垂れ落ちやすく、上向き溶接の自動化は難しいとされていました。このような溶接に対しては溶接機器だけでなく溶接材料からのアプローチが必要であり、当社では溶接材料メーカーの特色を生かして上向溶接に適したフラックス入りワイヤSF-1A、FC-1Aを開発・実用化しています。上向多層盛溶接に対しても溶接狙い位置を安定させることのできる簡易溶接ロボットNAVI-21の溶接線記憶機能を利用して実用化を図りました。写真-7にはNAVI-21による上向き溶接施工例を示します。
写真-7 上向き溶接適用例(ワイヤ: FC-1A)
写真-7 上向き溶接適用例(ワイヤ:FC-1A)
3.プラズマガウジングの自動化
ガウジング作業は溶接部の品質確保の上では重要な作業ですが、騒音や火花など必ずしも作業環境のよくない作業です。このような作業を簡易溶接ロボットNAVI-21の溶接線記憶機能を応用することにより、自動化とガウジングの安定化を実現することが出来ました。ガウジングは狙い位置を修正することによりガウジング幅や深さも調整することが出来ます。写真-8に実用例を示します。
写真-8 NAVI-21による自動プラズマガウジング例
写真-8 NAVI-21による自動プラズマガウジング例