NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

F054プラズマレーザー事業およびオプト事業の概要

平成20年4月1日をもって、当社と旧・日鐵溶接工業(株)は、当社を存続会社として合併しました。合併に伴い、日鐵溶接工業(株)のプラズマレーザー事業およびオプト事業は、当社の機器・オプト事業部として引き継いでおり、これまで皆様からいただいております信頼のブランド商品を引き続き供給しております。この機会に、これら事業の概要を改めてご紹介いたします。
 
当社のプラズマ事業
~プラズマ溶接法と溶接機器の概要~

1. はじめに

プラズマ溶接法が実用化されて、すでに40年以上が経過しました。当社は旧・日鐵溶接工業時代を含め、プラズマ溶接機器の供給メーカーとして、着実な実績を積み重ねております。そうした背景のもと、プラズマ溶接法のメリットが浸透し、現在では幅広い産業分野で採用されるようになっております。

今回は、プラズマ溶接法について原理・特長・実施例などをご紹介させていただきます。

2. プラズマとは

図1 プラズマとは
【図1 プラズマとは】

物質の状態には固体/気体/液体の3態があることは広く知られています。通常、温度を上げることでこの変化は自然に起こる現象です。さらに温度を上昇させると気体の分子は解離して原子となり、さらに温度が上昇すると、原子核のまわりを回っていた電子が原子から離れて正イオンと電子に分離します。この現象を電離と言い、この時生じた荷電粒子を含む気体をプラズマと呼びます。プラズマ状態の高温エネルギーを利用したのがプラズマ溶接機です。

3. プラズマ溶接法とMIG溶接比較

図2 図3
図2はMIG溶接を図式化したものです、MIG溶接では溶接ワイヤ(電極)を送給ローラーで送給し、ワイヤ自体を溶融させ金属を接合させるもので、消耗電極型の溶接法と表現されます。これに対しプラズマ溶接は、電極消耗の少ない非消耗電極型の溶接法と表現されており、TIG溶接もこの分類に入ります。

図3はプラズマトーチを図式化したもので、タングステン電極(陰極)と水冷ノズル(陽極)の間に小電流のパイロットアークを発生させます。このアーク中にパイロットガスを通過させると超高温のプラズマアークを形成させることが出来ます。パイロットガスの役割が重要であり、溶接結果を左右します。要求される溶接内容で流量は決定されます。大きな流量を流せば図3に示すような材料を貫通したキーホール溶接となり、流量を少なくすれば母材表面だけを溶かすナメ付け溶接になります。

4. プラズマ溶接の市場

プラズマ溶接法は、ノンスパッタで溶接品質に優れた溶接法が評価され、各方面で自動溶接ラインに導入されています。特に自動車分野には当社の販売台数の約60%(図4)を占め、多くの実績を残しています。従来は特に駆動・伝達系、排気系で占められていましたが、近年テーラードブランク溶接(TBW)溶接に採用されているのをはじめ、さらに拡販が予想されています。

図5に実施例を、写真1に溶接サンプル、写真2にTBWの断面マクロを示します。造船分野では液化天然ガス(LNG)タンカーのSUSメンブレン溶接に、低歪みで高速溶接が可能なため工期の短縮に大きく貢献することが高く評価され、韓国の造船各社に100台を上回る当社製プラズマ溶接機が採用されて稼働しています。

電機分野においては冷凍機のコンプレッサー容器の自動シーム溶接装置に採用され、このシステムは全世界で稼働しており、現在でもリピート需要が継続しています。

【図4 分野別シェア】 (当社実績)
【図4 分野別シェア】
(当社実績)

<適用メリット>
1.プレスライン縮小
2.鋼材在庫の圧縮と調達の簡易化
3.軽量化・衝突安全性向上
4.異材継手によるさらなる軽量化
 
図5 テーラードブランク溶接(TBW)実施例
【図5 テーラードブランク溶接(TBW)実施例】

写真1 溶接サンプル 写真1 溶接サンプル
【写真1 溶接サンプル】

写真2 テーラードブランク(TBW)マクロ断面 写真2 テーラードブランク(TBW)マクロ断面
写真2 テーラードブランク【(TBW)マクロ断面】
 
 

5.プラズマ溶接機について


当社のプラズマ溶接の全国シェアは約60%に達しており、トップシェアの地位を長年の間維持しています。背景には豊富な溶接ノウハウと高性能なプラズマ溶接機に支えられていると考えています。以下に、プラズマ溶接機の品揃えについて紹介します。

表1にプラズマ溶接機のラインアップをまとめました。販売台数のほとんどがNW-150AH-ⅢおよびNW-350AH-Ⅲで、年間約200台となっています。AC/DCのNW-300ASRはアルミ溶接用に開発された交/直兼用プラズマ溶接機です。

表1 プラズマ溶接機
DC AC/DC
NW-35AH-Ⅲ NW-150AH-Ⅲ NW-350AH-Ⅲ NW-400AH-Ⅲ NW-300ASR
NW-35AH-Ⅲ NW-150AH-Ⅲ NW-350AH-Ⅲ NW-400AH-Ⅲ NW-300ASR
 

6. おわりに

プラズマ溶接機は他の溶接法とは異なり、アークの指向性やノンスパッタなどが優れており、また長時間の連続溶接が可能であり、自動溶接化の要望にお応えできることから、溶接ロボットや専用治具装置等に搭載されて、さらに採用台数の大幅な拡大が期待されています。

このような豊富な実績を踏まえて、当社では今後、さらにプラズマ機器・プラズマトーチの改良開発に努めて、お客様の現場における課題解決のお役に立てるよう、一層の技術開発を進めていく所存です。
 
当社のオプト事業
~通信用ケーブル、光ファイバセンシング用金属管入りセンサの概要~

1. はじめに


当社は総合溶接メーカーとして、その技術の発展と新製品の開発に力を注いできました。 各種溶接材料、溶接機器・装置、プラズマ・レーザー機器・装置に加えて、果敢に新規事業に挑戦し、特に独自の技術力で開発した金属管光ファイバケーブル事業は各方面から高い評価をいただいております。

発展し続ける高度情報通信網の重要な要素である光ファイバケーブルには、高い安全性や信頼性が要求されます。 1984年、『強くて電線並みに手軽に扱える光ファイバケーブルの開発』をコンセプトに、その第一歩を踏み出しました。1988年、溶接事業で培ってきた金属管の『造管技術』と、その金属管に光ファイバを通す『挿通技術』を結合した独自の製造技術により、金属管光ファイバケーブル『ピコループ』は生まれました。

ピコループ【PICOLOOP】は、PICO=10のマイナス12乗で細径、LO=Longで長い、OP=Opticsで光学、の意味です。細くて長い光ケーブルを表していて、折れやすい光ファイバを金属管で保護して過酷な環境下での使用に耐え、誰にでも簡単に扱える当社製品の総称としています。

製品としては社会のニーズに沿って大別して、通信用光ケーブル、光センシング用金属管入りセンサ(温度測定用、歪み測定用)の2種類をご提供いたします。

 

2. 通信用ケーブル


●ピコケーブル
屋内外用光ケーブルで、多芯幹線用としても適用可能です。内径1.6mmのSUS管で保護しているので、鳥獣害に強い、水密性・耐側圧に優れ直埋設が可能、インシュロックで強固に固定可能、1,000℃で30分間通信可能、等々の特徴があります。 最大で1条長2,000mまで生産対応可能です。

鳥獣虫からしっかり防護

【適用事例】各電力会社発電所および変電所、民間企業プラント構内LAN、三菱電機シーケンサ、JR地上信号系、他

ピコチューブ製造工程

●ピコフレキ
光ファイバをフレキシブルSUS管で保護し、両端に光コネクタを取り付けた基本的には屋内用光ケーブルで、鼠等の獣害に強い、耐水性・耐側圧に優れ、インシュロックで強固に固定可能です。 通常外皮は難燃PVC被覆ですが、その他にもポリエチレンやテフロン被覆品もご用意できます。

各種光コネクタにも対応

【適用事例】各電力会社発電所および変電所、民間企業プラント建家内LAN、三菱電機シーケンサ、JR他地上、車上信号系、他

ピコフレキの構造
ピコフレキの構造

●屋内外仮設用ピコフレキ(ピコドラム)
ゴムタイヤチェーンにも使用されるエラストマーゴム被覆を施したピコフレキをドラムに巻いた製品で、光ケーブルを電気延長コード同様に取り扱えるようにした製品です。耐水性・耐寒性に優れ、完全防水型光コネクタとの組み合せで雨天時にも安心して屋外でご使用になれます。また両端光コネクタ付きのピコフレキで、屋内での制御通信用光ケーブルとして可動するケーブルベアでの使用可能な製品もこのエラストマーゴム被覆を施しています。

各種光コネクタにも対応

【適用事例】民放テレビ中継用(ゴルフ中継他)、ケーブルテレビ屋外中継用、イベント企画会社、公共通信ライン応急回線確保

適用例1:LAN回線工事の迂回仮設工事  適用例2:公共通信ラインの応急回線確保

適用例3:イベント等の屋外中継放送の回線確保

 

3.光ファイバセンシング用金属管入りセンサ


光ファイバは温度センサあるいは歪みセンサとして使用出来ます。 従来の電気的測定方式と比較すると以下の利点があります。

1.センサ専用の電源、信号線が不要です。
2.電磁ノイズの影響を受けません。
3.媒体がガラスの光ファイバで耐腐食性に優れ長寿命です。
4.防爆雰囲気での使用が可能です。

このような利点とともに、長距離の温度や歪みを分布的に1本のセンサで連続的に測定可能ですので、炉体温度分布および変状の長期モニタリング、地盤変状監視、トンネル火災検知、等に採用されております。

【適用事例】東京湾アクアライン海底トンネル部火災検知センサ、地熱発電ボアホールセンサ、地滑り・地盤変状センサ、民間企業炉温度監視センサ、他

ピコテンプセンサ(型式:PTS) ピコストレインセンサ(型式:PSS)

当社では単に光ファイバセンサメーカーとしてだけではなく、システム設計・施工までを含め たシステムインテグレーターとしてご要望に対応可能です。

 

4.おわりに


以上のように、当社では他社にない製品を通して社会に貢献いたします。 通信用ケーブルはオフィスLAN、ファクトリーLAN用光通信ケーブルとして最適な製品を、また光ファイバセンシングは従来の電気的センサでは問題のあった分野への最適なセンサおよびシステムをご提供してまいります。

また、全ての製品は一品一様の完全受注生産体制を取っておりますので、必要な光ファイバ芯数、必要条長での対応をいたします。