技術情報溶接Q&A
F058スーパーダイマ®用フラックス入りワイヤ FC-309SD
1. はじめに
亜鉛めっき鋼板は経済性に優れた防錆鋼板として、建築、電器、自動車などの分野において広く用いられています。新日本製鐵株式会社では、従来の亜鉛めっき鋼板の耐食性をさらに高め、めっき層成分が亜鉛を主に、約11%のアルミニウム、約3%のマグネシウムおよび微量のシリコンからなる高耐食性めっき鋼板のスーパーダイマ®1)を開発し、多くの分野で活用されています。従来、亜鉛めっき鋼板の溶接では、炭素鋼の溶接材料が用いられており、溶接のままの状態では耐食性が劣化するという課題がありました。そのため、溶接部にタッチアップと呼ばれる刷毛塗りやスプレーによる補修塗装が行われ、煩雑さや生産性の低下が指摘されていました。
このようなケースの対応として、亜鉛めっき鋼板の溶接に、耐食性の良好なステンレス鋼溶接材料の適用を試みましたが、亜鉛脆化により溶接部に割れを生じるため、適用が困難でした。
そこで、スーパーダイマ®の溶接の高能率化を図るため、溶接部の補修塗装なしで母材と同等の耐食性を有するとともに、耐亜鉛割れ性に優れるステンレス鋼溶接材料の開発に着手し、フラックス入りワイヤFC-309SDを開発しました。本開発は、その技術が認められ2009年6月に第39回日本溶接協会賞「技術賞(開発奨励賞)」を受賞しました。
以下にFC-309SDの特長を紹介いたします。
2. スーパーダイマ®用フラックス入りワイヤ FC-309SD
スーパーダイマ®用フラックス入りワイヤFC-309SDの特長は、1.溶接のままで、スーパーダイマ®と同等の耐食性が得られるため、補修塗装が省略できます。
2.高強度で、母材と同等以上の引張性能が得られます。
3.良好なビード外観が得られます。
4.「建築基準法第37条第二号」の規定により、国土交通大臣指定建築材料としての特別認定を取得しています。(認定番号:MWLD-0011)
ワイヤサイズは、0.9およびび1.2mmΦを取り揃えています。

3. FC-309SDの用途
新日本製鐵株式会社の高耐食性めっき鋼板スーパーダイマ®の溶接4. FC-309SDの溶接継手性能
表1 FC-309SDによるスーパーダイマ®の溶接継手性能
引張試験 | 衝撃試験 | |
引張強さ MPa |
破断位置 | vE 0℃ J/cm² |
422 | 母材 | 48 |
(注)板厚:5mmのスーパーダイマ®突合せ溶接
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ビード外観 | 断面マクロ |
図1 FC-309SD(0.9mmΦ)によるスーパーダイマ®のすみ肉溶接例
炭素鋼 フラックス入りワイヤ |
FC-309SD |
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図2 溶接部の塩水噴霧試験結果
(JIS Z 2371 試験温度:35℃、1,000hr)
(JIS Z 2371 試験温度:35℃、1,000hr)
建築物の主要構造部材にも適用可能
FC-309SDは「建築基準法第37条第二号」の規定により、国土交通大臣指定建築材料としての特別認定を取得しています。

FC-309SDは、その技術が認められ、第39回日本溶接協会賞「技術賞(開発奨励賞)」を受賞しました。

5. おわりに
スーパーダイマ®用として開発したステンレス系のフラックス入りワイヤFC-309SDは、亜鉛割れが発生せず、溶接後の塗装なしで良好な耐食性が得られます。今後、各分野での溶接部の品質向上や作業能率向上のニーズに対応し、トータルコスト低減の一助になれば幸いです。
注1)「スーパーダイマ®」は新日本製鐵株式会社の高耐食性めっき鋼板の商品名です。
注1)「スーパーダイマ®」は新日本製鐵株式会社の高耐食性めっき鋼板の商品名です。