技術情報溶接Q&A
F061低合金耐食性鋼用溶接材料について
1. はじめに
金属がさびて劣化することを腐食といいますが、構造物として使用している鋼材が腐食すれば、その耐久性を損なうことになります。従って、構造物の寿命を延ばすということは、鋼材の防食を図ることでもあり、その対策としては(1)腐食しない鋼材(ステンレス鋼などの高合金)、あるいは腐食を進行させない鋼材を用いる(2)鋼材の表面を亜鉛めっき等で被覆する、あるいは各種塗料を塗装して地金を保護する(3)電気防食(溶液環境)を行い、腐食の進行を遅らせるような方法がとられています。構造物の種類、腐食環境、経済的理由等によって、上記の防食対策はさまざまです。これまでは、塗装塗り替え等の定期的メンテナンスが一般的であった分野でも、近年ではライフサイクルコスト軽減や長寿命化等のニーズの高まりとともに、普通鋼から耐食性鋼への切り替えが進んでいます。
本稿では、上記(1)の腐食を進行させない鋼材である耐食性低合金鋼の概要を述べるとともに、これに対応した当社製品ラインアップを紹介いたします。
2.耐候性鋼
(1)一般の耐候性鋼(JIS規格品)耐候性鋼は、大気環境下において普通鋼と比較して腐食しにくい鋼です。これは、P、Cu、Cr、Ni等の合金を含む低合金鋼であり、使用年月の経過とともに緻密な保護性さび層を形成することで、それ以降のさびの進行が遅くなるよう工夫されたものです。橋梁分野などのような社会インフラ整備での採用が多い鋼種です。
現在、JIS鋼材規格には、耐候性重視の高耐候性鋼材(SPA)が、溶接性を加味した溶接構造用耐候性鋼材(SMA)が制定されており、特に後者については若干、耐候性の劣る塗装して使用するPタイプ(Cu-Cr系)と、無塗装でも使用できるWタイプ(Cu-Cr-Ni系)の2種があります。
また、上記Wタイプの耐候性鋼においては元来、裸仕様が建前でしたが、保護性さび層が形成されるまでの数年間にみられるさびの飛散、さび汁による汚染、色調ムラ等の景観上の問題もあって塗装が施されていました。しかしながら、近年では、保護性さび生成を促進させるためのさび安定化処理の活用により、本来の無塗装で使用されるケースが多くなっています。
これらJIS規格品の耐候性鋼の中でも、高耐候性鋼材(SPA)が最も耐食性が優れています。これは、耐候性に最も効果があるPを0.07~0.15%と非常に多く含有しているためですが、反面Pは高温割れ性を高める元素ですので、SPA規格品は溶接に適した鋼材ではありません。
(2)ニッケル系高耐候性鋼
耐候性鋼材においては、さびの状態によってその耐候性が変化します。塩分量が多い環境、湿潤状態が継続する、いわゆる風通しの悪い環境は、保護性さびの生成を阻害するために、腐食環境が厳しいといえます。そのため、海からの海塩粒子の飛散を受ける海浜地域では、耐候性鋼材(SMA)では必ずしも期待通りの耐食性が得られないケースがありました。そこで、建設省土木研究所、鋼材倶楽部および日本橋梁建設協会の三者による調査研究が実施され、図1に示す耐候性鋼材(SMA)の適用指針が定められ、飛来塩分量が0.05mdd(mg/dm²/day)以下になるような地域に制限されるようになっています。
これに対し、海岸線に近い地域でも適用可能となるニッケル系高耐候性鋼(Ni≧0.4%)が、各鋼材メーカーによる独自成分系で開発されています。新日本製鐵(株)(以下、新日鐵)では、1%Ni系と3%Ni系のタイプを商品化しており、3%Ni系高耐候性鋼は数多くの実績を積んでいる鋼材です。上記のニッケル系高耐候性鋼においては、耐候性鋼材(SMA)とは異なる成分系となっており、高Ni-Cu系を主成分としています。耐候性鋼材(SMA)で有効であったCrは、ニッケル系高耐候性鋼では有害として極力、排除された成分設計となっています。
ニッケル系高耐候性鋼の耐候性を示す指標として、耐候性合金指標(ν値)があります。図2はν値と耐候性との関係を示す参考図です。
ν値=1 /〔(1.0-0.16C)×(1.05-0.05Si)×(1.04-0.016Mn)×(1.0-0.5P)×(1.0 + 1.9S)×(1.0-0.10Cu)×(1.0-0.12Ni)×(1.0-0.3Mo)×(1.0-1.7Ti)
(*)三木千壽、市川篤司、鵜飼真、竹村誠洋、中山武典、紀平寛(2003):無塗装
橋梁用鋼材の耐候性合金指標および耐候性評価法の提案、土木学会論文集、No.738/Ⅰ-64、pp.271-281、2003.7

図1 無塗装耐候性鋼材(SMA)の適用指針
(建設省土木研究所、鋼材倶楽部、日本橋梁建設協会)
(1)飛来塩分量≦0.05mdd(mg/dm²/day)
(2)上記の地域については、飛来塩分量の測定を省略してもよい
(2)上記の地域については、飛来塩分量の測定を省略してもよい

図2 耐候性合金指標(ν値)と耐候性との関係を示す参考図※
(※引用文献:新日本製鐵(株)ニッケル系高耐候性鋼のパンフレット資料p.5)
(3)BHS鋼
BHS鋼とは、新しい橋梁用高性能鋼材(Bridge Highperformance Steel)のことで、高レベルの靭性値を保証した高降伏点鋼であり、その中には耐候性を保有する鋼材も含まれています。2008年に橋梁用高降伏点鋼板としてJIS鋼材規格に制定されており、耐候性鋼としてSBHS500W(YS ≧ 500MPa)とSBHS700W(YS ≧ 700MPa)の2規格が制定されています。
前述した耐候性鋼材規格を表1にまとめて示します。また、当社の耐候性鋼用溶接材料銘柄を表2に、BHS鋼溶接継手の要求性能を表3に示します。ただ、BHS鋼の耐候性SBHS500W、SBHS700W鋼用の溶接材料に関しては、まだ実施工での使用例が無いために、表2から割愛しています。
表1 耐候性鋼材規格
種別 | 化学成分(%) | 機械的性能例 | ||||||||||||
規格 | 名称 | 種類 | 概要 | C | Si | Mn | P | S | Cu | Cr | Ni | 降伏強さ (MPa) |
引張強さ (MPa) |
吸収エネル ギー (J) |
JIS G 3114 |
溶接構造用 耐候性 圧延鋼材 |
SMA400AW SMA400BW SMA400CW |
無塗装用 | ≦0.18 | 0.15~ 0.65 |
≦1.25 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.30~ 0.50 |
0.45~ 0.75 |
0.05~ 0.30 |
≧235※ | 400~ 540 |
─ ≧27(0℃) ≧47(0℃) |
SMA400AP SMA400BP SMA400CP |
塗装用 | ≦0.18 | ≦0.55 | ≦1.25 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.20~ 0.35 |
0.30~ 0.55 |
─ | ─ ≧27(0℃) ≧47(0℃) |
||||
SMA490AW SMA490BW SMA490CW |
無塗装用 | ≦0.18 | 0.15~ 0.65 |
≦1.40 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.30~ 0.50 |
0.45~ 0.75 |
0.05~ 0.30 |
≧355※ | 490~ 610 |
─ ≧27(0℃) ≧47(0℃) |
||
SMA490AP SMA490BP SMA490CP |
塗装用 | ≦0.18 | ≦0.55 | ≦1.40 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.20~ 0.35 |
0.30~ 0.55 |
─ | ─ ≧27(0℃) ≧47(0℃) |
||||
SMA570W | 無塗装用 | ≦0.18 | 0.15~ 0.65 |
≦1.40 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.30~ 0.50 |
0.45~ 0.75 |
0.05~ 0.30 |
≧450※ | 570~ 720 |
≧47 (-5℃) |
||
SMA570P | 塗装用 | ≦0.18 | ≦0.55 | ≦1.40 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.20~ 0.35 |
0.30~ 0.55 |
─ | |||||
JIS G 3125 |
高耐候性 圧延鋼材 |
SPA-H SPA-C |
無塗装用 | ≦0.12 | 0.20~ 0.75 |
≦0.60 | 0.070 ~0.150 |
≦0.035 | 0.25~ 0.55 |
0.30~ 1.25 |
≦0.65 | ≧355 ≧315 |
≧490 ≧450 |
─ ─ |
新日鐵 規格 |
ニッケル系 高耐候性 圧延鋼材 |
SMA400BW-MOD-V12 SMA400CW-MOD-V12 |
1%Ni系 (ν≧1.2) |
≦0.18 | ≦0.35 | ≦1.40 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.50~ 1.00 |
≦0.08 | 0.70~ 1.70 |
≧235※ | 400~ 540 |
≧27(0℃) ≧47(0℃) |
SMA490BW-MOD-V12 SMA490CW-MOD-V12 |
≦0.55 | ≦1.60 | ≧355※ | 490~ 610 |
≧27(0℃) ≧47(0℃) |
|||||||||
SMA570W-MOD-V12 | ≧450※ | 570~ 720 |
≧47 (-5℃) |
|||||||||||
SMA400BW-MOD-V15 SMA400CW-MOD-V15 |
3%Ni系 (ν≧1.5) |
≦0.18 | 0.15~ 0.65 |
≦1.25 | ≦0.035 | ≦0.035 | 0.30~ 0.50 |
≦0.08 | 2.50~ 3.50 |
≧235※ | 400~ 540 |
≧27(0℃) ≧47(0℃) |
||
SMA490BW-MOD-V15 SMA490CW-OD-V15 |
≦1.40 | ≧355※ | 490~ 610 |
≧27(0℃) ≧47(0℃) |
||||||||||
SMA570W-MOD-V15 | ≧450※ | 570~ 720 |
≧47 (-5℃) |
|||||||||||
JIS G 3140 |
橋梁用 高降伏点 鋼板 |
SBHS500W | 無塗装用 | ≦0.11 | 0.15~ 0.55 |
≦2.00 | ≦0.020 | ≦0.006 | 0.30~ 0.50 |
0.45~ 0.75 |
0.05~ 0.30 |
≧500 | 570~ 720 |
≧100 (-5℃) |
SBHS700W | ≦0.11 | 0.15~ 0.55 |
≦2.00 | ≦0.015 | ≦0.006 | 0.30~ 1.50 |
0.45~ 1.20 |
0.05~ 2.00 |
≧700 | 780~ 930 |
≧100 (-40℃) |
表2 耐候性鋼用溶接材料
適用鋼材 | 日鉄溶接工業の耐候性鋼用溶接材料(該当JIS規格) | ||||||||||
規格 | 名称 | 種類 | 被覆アーク溶接棒 | フラックス入りワイヤ(CO₂) | ソリッドワイヤ | サブマージアーク溶接 | |||||
全姿勢 | すみ肉専用 | 全姿勢 | すみ肉専用 | CO₂ | Ar+CO₂ | 突合せ | すみ肉専用 | ||||
JIS G 3114 |
溶接構造用 耐候性 圧延鋼材 |
SMA400P SMA490P |
塗装用 | CT-16Cr (DA5016W) または CT-16CR2 (DA5016W) |
CT-26GCr (DA5026W) |
SF-50W (YFA-50W) または FC-50W (YFA-50W) |
SM-50FW (YFA-50W) または FCM-50FW (YFA-50W) または SX-50FW※ (YFA-50W) |
FGC-55 (YGA-50P) |
─ | Y-CNCW × YF-15B または NF-100 (S502-AW) |
Y-CNCW × NF-820 (S502-AW) |
SMA400W SMA490W |
無塗装用 | YM-55W (YGA-50W) |
─ | ||||||||
SMA570P SMA570W |
塗装用 無塗装用 |
CT-60Cr (DA5816W) |
CT-60GCr (DA5826W) |
SF-60W (YFA-58W) |
FCM-60FW (YFA-58W) |
YM-60W (YGA-58W) |
─ | Y-60W × YF-15B または NF-100 (S582-AW) |
Y-60W × NF-820 (S582-AW) |
||
新日鐵 規格 |
ニッケル系 高耐候性 圧延鋼材 |
SMA400W- MOD-V12 SMA490W- MOD-V12 |
1%Ni系 | N-11 | ─ | SF-50WLN | ─ | ─ | YM-1N | Y-204B × NF-320M |
Y-204B × NF-820 |
SMA570W- MOD-V12 |
L-60S | ─ | SF-60T | ─ | YM-70C | ─ | |||||
SMA400W- MOD-V15 SMA490W- MOD-V15 |
3%Ni系 | CT-50N | ─ | SF-50WN | SM-50FWN | ─ | YM-3N | Y-3NI × NF-320M |
Y-3NI × NF-820 |
||
SMA570W- MOD-V15 |
CT-60N | ─ | SF-60WN | SF-60FWN | ─ | Y-3NI × NB-55LM |
表3 BHS鋼溶接継手の所要性能
鋼材の種類 (JIS規格の記号) |
継手の引張強さ※ (MPa) |
溶接金属のシャルピー吸収エネルギー | |
試験温度(℃) | シャルピー吸収エネルギー(J) | ||
SBHS500 SBHS500W |
≧570 | -5 | ≧47 |
SBHS700 SBHS700W |
≧780 | -15 | ≧47 |
3. 耐硫酸露点腐食鋼
元々、耐硫酸露点腐食性鋼は重油焚きのボイラの排煙設備で発生する硫酸をターゲットにした耐食材料で、Cu-Sb系とCu-Cr系を主成分とする低合金鋼です。しかしながら、近年ではダイオキシン対策(ごみ焼却炉)によって新たに発生するようになった塩酸に対する耐食性も求められるようになっています。これに呼応した鋼材には、新日鐵の耐塩酸性を高めた新S-TEN1鋼(Cu-Sb系)があります。また、耐硫酸露点腐食性鋼といっても、排煙設備での排ガス温度等の腐食環境に応じて、最適な成分系を有する製品がラインアップされており、その適用区分を表4に示します。当社では住友金属工業(株)(以下、住友金属)が開発した耐硫酸露点腐食性鋼(CR1A)に適した溶接材料もラインアップしています。表5に当社の耐硫酸露点腐食性鋼用の溶接材料を示します。表4 新日鐵の耐硫酸露点腐食鋼(S-TEN1およびS-TEN2)の適用範囲
排ガスの温度 | 装置例 | 適正鋼種 | 腐食例(片面) |
500℃以上 | ─ | S-TEN不適 | ─ |
500℃~350℃ | 減温塔前ダクト | S-TEN2 | 稼働中;0.3mm/年以下 起動停止中;2~3μm/回 |
350℃~硫酸露点 | 減温塔 | S-TEN1 | 稼働中;0.1mm/年以下 起動停止中;2~3μm/回 |
S-TEN2 | |||
硫酸露点~水露点 塩酸露点~水露点 |
減温塔/バグフィルターケーシング 空気予熱器/煙道・煙突 |
S-TEN1 | 約0.2mm/年 |
水露点未満 | 煙突/脚部・頂部 | S-TEN1+耐酸塗料 | 約0.1mm/年 |
表5 耐硫酸露点腐食鋼用溶接材料
鋼材 メーカー |
鋼種の組合せ | 日鉄溶接工業の耐硫酸露点腐食鋼用溶接材料(該当JIS規格) | ||||
被覆アーク溶接棒 | フラックス入りワイヤ | ソリッドワイヤ | ティグ溶加材 | サブマージアーク | ||
新日鐵 | S-TEN1+ S-TEN1 |
ST-16M (E4916-G) |
SF-1ST (─) |
─ | FCT-1ST※ (─) |
YFC-1ST※× YF-15B(S502-H) |
S-TEN2+ S-TEN2 |
ST-03Cr(E4903-G) ST-16Cr(E5516-G) |
FC-23ST (─) |
─ | ─ | ─ | |
住友金属 | CR-1A+ CR-1A |
ST-03CrA(E4903-G) ST-16CrA(E4916-G) |
FC-CR4(CO₂) | YM-W4 (─) |
YT-W4 (─) |
─ |
指定なし | 耐硫酸露点腐食鋼 +軟鋼 |
S-16 (E4316-U) |
SF-1 (T49J0T1-1CA-UH5) |
YM-26 (YGW11) |
YT-28 (YGT50) |
Y-D× YF-15 (S502-H) |
耐硫酸露点腐食鋼 +ステンレス鋼 |
S-309R (ES309-16) |
SF-309L (TS309L-FB0) |
YM-309 (Y309) |
YT-309 (Y309) |
Y-309× BF-300F (─) |
4. 耐海水性鋼
海水での腐食のメカニズムは飛沫帯と海水中との差異、使用温度、エロージョン腐食等によっても異なることから、さまざまな耐海水性材料が使われています。例えば、孔食発生が問題となる環境では、高Mo含有のオーステナイト系ステンレス鋼(新日鐵YUS270)やスーパー二相ステンレス鋼(住友金属DP3W)が適用され、熱交換器の伝熱材のように生物の付着を嫌う場合では、チタンやキュプロニッケル(銅とニッケルの合金)のような非鉄金属が採用されています。一方、低合金鋼の耐海水性材料の用途としては、比較的マイルドな環境での利用として、河口堰に設置する溶接構造物や、最近では造船分野での適用が話題になっています。その好例に、新日鐵のMARILOYS-400鋼管があります。これは、1%程度のCrを含有する400MPa級鋼管ですが、上記の高合金のような耐食性を有しているわけではありません。しかし、使用条件によって異なりますが、海水中においての腐食量が普通鋼の半分程度に抑えられることから、タンカーのバラスト管のような海水管に最適です。また、スラッジ等の介在による孔食、磨耗を伴う耐食性にも優れるため、原油タンカーの荷油管にも適用可能です。今後造船分野においては、ますます普通鋼からこのような耐食性鋼への切替えが進むものと期待されます。
新日鐵のMARILOY鋼用溶接材料を表6に示します。
表6 400~490MPa級MARILOY鋼用溶接材料
溶接材料 | 日鉄溶接工業の 対応銘柄 |
シールドガス | 新日鐵マリロイ鋼の種類 | 船級認定※ | ||
S | G | P | ||||
被覆アーク溶接棒 | RS-55 | ─ | ○ | ABS、LR | ||
RS-55G | ─ | ○ | ○ | NV | ||
ソリッドワイヤ | YM-55RSA | Ar+20%CO₂ | ○ | ABS | ||
フラックス入りワイヤ | SF-55RS | CO₂ | ○ | ○ | ABS、DNV | |
ティグ溶加材 | YT-55RS | Ar | ○ | ─ |
5. 施工上の注意
(1)溶接材料の選定一般的な考え方としては、耐食性鋼の溶接材料は、鋼材に近い成分のものを選定します。一般の耐候性鋼(JIS規格品)に対しては、その強度レベルに応じ、PまたはWタイプの区別によって溶接材料を選定すれば問題はないと考えられます。また、Wタイプの溶接材料は、どちらの鋼種にも使用可能です。
それ以外の耐食性鋼材については、基本は鋼材メーカー独自の成分系となっていますので、鋼材メーカーが推奨する溶接材料の使用がベストです。前述の耐硫酸露点腐食性鋼のように微量成分が添加されているケースもありますので、注意が必要です。
(2)施工条件
本耐食性鋼は低合金鋼ですから、低温割れ防止策が必要となります。溶接棒やフラックスはメーカー推奨の条件にて乾燥させてから使用。また予熱に関しては、一般の耐候性鋼(JIS規格品)では「道路橋示方書・同解説書」を参照して下さい。
ただし、耐硫酸露点腐食鋼および耐海水性鋼については、現状、適用板厚がそれほど厚くありませんので、予熱フリーでの施工が可能と考えられます。むしろ、高温割れ感受性を高める元素を含んでいますので、高温割れ防止策が必要で、「なし形」ビードにならないような溶接条件での施工が必要となります。