NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

F068原油タンカー底板用高耐食性厚鋼板NSGP®-1用
全姿勢用シームレスフラックス入りワイヤSF-1・GP
下向すみ肉および水平すみ肉用シームレスフラックス入りワイヤSM-1F・GP

1. はじめに

わが国では1999年から3年間、(社)日本造船研究協会にSR242研究委員会が設置され、その中で海運各社、造船各社、鉄鋼各社、(財)日本海事協会、学識者が原油タンカーの貨物油タンク(Cargo Oil Tank、以下COT)の腐食問題について幅広く調査、検討されました。

新日本製鐵株式会社殿は2002年12月、この調査検討結果に基づき、耐食性に優れた新鋼板の開発に着手し、原油タンカー底板用高耐食性厚鋼板NSGP®-1(NIPPON STEEL'S GREEN PROTECT-1)※を世界に先駆けて開発しました。

そして2004年、日本郵船株式会社殿と共同で実船に適用し、良好な実証結果が得られました。

一方、2010年5月にロンドンで開催されたIMO第87回海上安全委員会において、COTの防食を強制化するSOLAS条約の改正案が採択され、同時にCOTの塗装性能基準および代替防食方法(COT用耐食鋼)の性能基準が採択されました。

適用船は下記1から3のいずれかの条件に該当する載貨重量5,000トン以上の原油タンカーのCOTにおいて、塗装または耐食鋼などによる防食措置が義務付けられました。

1.2013年1月1日以降に建造契約が結ばれた船舶
2.建造契約日がない場合、2013年7月1日以降起工または同様の建造段階にある船舶
3.2016年1月1日以降に完工の船舶

今回、原油タンカー底板用高耐食性厚鋼板NSGP®-1用の溶接材料としてフラックス入りワイヤを開発しましたので、以下に紹介します。

図1 原油タンカータンク断面の概略図
図1 原油タンカータンク断面の概略図

図2 原油タンカータンク底板のピット発生メカニズム模式図
図2 原油タンカータンク底板のピット発生メカニズム模式図
 

2. ワイヤ諸元

SF-1・GPおよびSM-1F・GPは、原油タンカー底板用高耐食性厚鋼板NSGP®-1用に開発したシームレスフラックス入りワイヤです。
ワイヤ諸元を表1に示します。

表1 ワイヤ諸元
銘柄 SF-1・GP SM-1F・GP
適用姿勢 全姿勢 下向すみ肉および水平すみ肉
電源特性 DCワイヤ(+)
シールドガス シールドガス

3. SF-1・GPおよびSM-1F・GPの特長

SF-1・GPおよびSM-1F・GPの溶接作業性は、当社製品として従来からあるSF-1およびSM-1Fの優れた作業性を維持しながら、溶接金属はNSGP®-1鋼用にマッチングするように処方設計をしました。また、シームレス形状なので、低水素で、さび難いなどの特長があります。

SF-1・GPおよびSM-1F・GPの特長
1.全姿勢用SF-1、下向すみ肉および水平すみ肉用SM-1Fと同等の優れた溶接作業性
2.良好なスラグはく離性、低ヒューム、低スパッタ化
3.シームレスワイヤなので、低水素でさび難い 

4. おわりに

SF-1・GPおよびSM-1F・GPは、原油タンカー底板用高耐食性厚鋼板NSGP®-1用に開発されたシームレスフラックス入りワイヤで、NSGP®-1とマッチングの良い溶接金属が得られ、溶接作業性も良好となっています。

今後、原油タンカー建造時の品質向上とトータルコスト低減の一助になれば幸いです。
※ NSGPは新日本製鐵株式会社殿の登録商標です。