NIPPON STEEL日鉄溶接工業株式会社

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技術情報溶接Q&A

F077FCuB片面サブマージアーク溶接用表フラックスNSH-55ER

1. はじめに

サブマージアーク溶接法は、高能率で安定した溶接作業性および優れた機械性能が得られることから、造船、造管、鉄骨、橋梁、車両など幅広い分野で適用されています。特に造船業界においては大型のバルクキャリア、タンカー、コンテナ運搬船等の建造数が増加傾向にあり、これらの建造における生産性を向上させるため、高能率化の要求が高まっています。一方、船の安全性、耐久性についても、その要求は増加傾向にあり、溶接部の信頼性向上の声も高まっています.そういった声に応えるべく、当社は造船の大板継ぎに用いられるFCuB片面サブマージアーク溶接における塗装性能を改善することを目的に、ビード表面の微細突起(鉄粒 写真1)を減少させた表フラックスNSH-55ERを開発しました。以下に、NSH-55ERの特長を紹介します。

写真1 微細突起(鉄粒)
 

2. 特長

・鉄粒突起が発生しにくいため、後工程でのグラインダー処理が不要となり生産コストの大幅な削減が可能です。
・表ビード表面にスラグがこびり付かないためスラグ剥離性が良好です。
・当社従来品と同じ溶接条件で使用可能です。

 

3. 溶接材料の組み合わせ

NSH-55ERと組み合わせる溶接材料は、表1に示すようにいずれの電極数においても溶接ワイヤはY-DL、裏フラックスはNSH-1RMとなります。
表1 溶接材料の組み合わせ
電極数 溶接ワイヤ 表フラックス 裏フラックス
2 電極 Y-DL×2 NSH-55ER NSH-1RM
3 電極 Y-DL×3 NSH-55ER NSH-1RM
4 電極 Y-DL×4 NSH-55ER NSH-1RM

4. 美麗な表ビード外観

写真2に表ビード外観を示します。従来品の表ビードには微細突起(鉄粒)が発生しているのに対して、新製品NSH-55ERでは、表ビードに微細突起(鉄粒)がほとんど認められず美麗なビード外観が得られます。NSH-55ERの開発においては、微細突起(鉄粒)の生成因子を究明し、フラックス成分組成を抜本的に見直すことによって、表ビードに発生する微細突起(鉄粒)の抑制に成功しました。
 
  表ビード外観 スラグ裏面
新製品
NSH-55ER
従来品
写真2 表ビード外観およびスラグ裏面

5. 美麗な表ビード概観

表2 溶接金属の機械的性質の一例(板厚20mm)
引張試験 シャルピー衝撃試験
0.2%耐力
(MPa)
引張強さ
(MPa)
伸び
(%)
位置 吸収エネルギー
0℃ -20℃
494 598 26 表面2mm下 90 87
裏面2mm上 137 92

6. おわりに

以上、紹介しましたように、新製品NSH-55ERは、お客様のトータルコスト低減に大きく寄与する製品となっております。今後も、お客様の品質向上、高能率化などのニーズにお応えするよう、溶接方法や溶接材料の開発に努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いします。