技術情報溶接Q&A
F097特化則改正に伴う溶接ヒュームの規制について
(びいど70号 2021年1月発行)1 はじめに
2020年4月22日に労働安全衛生法施行令(政令)と特定化学物質障害予防規則=特化則(省令)等を改正され「溶接ヒューム」※ 1と「塩基性酸化マンガン」について、新たに特定化学物質(管理第2 類物質)として位置づけられました。(2020 年4月22日公布、2021年4月施行(一部2022 年3月末まで経過措置あり))本稿では、今回の「溶接ヒューム」に係る改正について紹介します。
※1 溶接ヒューム:金属アーク溶接等作業※ 2 において加熱により発生する粒子状物質のこと。
※2 金属アーク溶接等作業:金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、またはガウジングする作業、その他溶接ヒュームが発生する作業のこと。
2 改正内容について
今回改正のポイントを以下に記します①「溶接ヒューム」に関しては、作業環境測定の対象から除外されました。
②全体換気装置による換気等
●屋内作業場については、溶接ヒュームを減少させるため、全体換気装置またはこれと同等以上の措置(プッシュプル型、局所排気装置が含まれる。)による換気の実施が義務付けられました。
③溶接ヒュームの測定、その結果に基づく呼吸用保護具の使用及びフィットテストの実施等(特化則第38 条の21 条第2 項~第8 項)
●金属アーク溶接等作業を継続して行なう屋内作業場の場合、当該作業の方法を新たに採用し、または当該作業の方法を変更しようとする場合は、個人ばく露測定※ 3 により、空気中の溶接ヒューム濃度を測定します。
●測定結果に応じて、必要であれば換気装置の風量の増加およびその他必要な措置を講じる。測定結果は、金属アーク溶接等作業を行なわなくなった日から3 年間保存します。
●測定結果に応じて有効な呼吸用保護具を選択し、労働者に使用させます。また、1 年以内ごとに1 回、フィットテストの実施をし、その結果を記録するとともに3 年間保存します。
※3 個人ばく露測定は、第1 種作業環境測定士、作業環境測定機関等の十分な知識及び経験を有する者により実施されるべきものです。
④特定化学物質作業主任者の選任
●「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了している者から選任し(特化則第27条)、次の事項を行なう必要があります。(特化則第28 条)
⑴作業に従事する労働者が特定化学物質により汚染され、これらを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮する。
⑵局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を、1 カ月を超えない期間ごとに点検する。
⑶保護具の使用状況を監視する。
⑤健康診断の実施が義務付けられました。(特化則第39条~42条)金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者に対し、雇入れまたは当該業務への配置換えの際およびその後6 カ月以内ごとに1 回、定期に規定の事項について健康診断(1次検診)を実施する。この1次検診の結果、他覚症状が認められる者等で、医師が必要と認めるものに対し、健康診断を実施する。(2次検診)
これら健康診断の結果は5 年間の保存が必要となり、特定化学物質健康診断結果報告書(特化則様式第3号)を労働基準監督
署長に提出する必要があります。
(注)金属アーク溶接等作業に常時従事する場合は、上記とは別に「じん肺健康診断」の実施が必要です。
⑥その他必要な措置
上記以外に、以下の作業管理等に関する規定等が適用となりました。
⑴安全衛生教育(安衛則第35条)
事業者は、労働者を新たに雇入れた時や作業内容を変更した時は、従事する業務に関する安全衛生教育を行なう。
⑵ぼろ等の処理(特化則第12条の2)
特定化学物質(第2類)に汚染されたぼろ(ウエス等)、紙くず等をふた付きの不浸透性の容器に納める必要がある。
⑶不浸透性の床(特化則第21条)
作業場所の床は、不浸透性のもの(コンクリートや鉄板等)とする。
⑷関係者以外の立入禁止措置(特化則第24条)
関係者以外は立入禁止とするとともに、その表示を行なう必要があります。
⑸運搬貯蔵時の容器等の使用等(特化則第25条)
特定化学物質(第2類)を運搬、貯蔵する際は、堅固な容器等を使用し、貯蔵場所は一定の場所にし、関係者以外を立入禁止とする。
⑹休憩室の設置(特化則第37条)
作業場所以外の場所に休憩室を設けること。
⑺洗浄設備の設置(特化則第38条)
洗顔、洗身またはうがいの設備、更衣設備および洗濯のための設備を設けること。
⑻喫煙または飲食の禁止(特化則第38条の2)
作業場での喫煙・飲食の禁止をするとともに、その表示を行なう必要があります。
⑼有効な呼吸用保護具の備え付け等(特化則第43条、第45条)
必要な呼吸用保護具を作業場に備え付ける必要があります。
3 事業者が行うべき事項まとめ
今回の改正により、事業者はそれぞれの作業場において以下の表に示す事項について事業者に義務付けられました。
※ 4 「屋内作業場」とは、作業場の建屋の側面の半分以上にわたって壁、羽目板その他のしゃへい物が設けられている場所。ガス、蒸気または粉じんがその内部に滞留するおそれがある場所。「屋外作業場」とは、屋外作業場や、毎回異なる屋内作業場で作業を行うことを指します。
4 おわりに
特化則改正に伴う溶接ヒュームの規制の概要について紹介しました。本稿がお客様のご理解の一助になれば幸いです。なお、詳細につきましては厚生労働省のホームページにてご確認ください。また、本改正に伴うご対応については、所在の都道府県労働局または労働基準
監督署へご相談、お問い合わせください。
都道府県労働局または労働基準監督署
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